研究概要 |
Fe_2Ceアモルファス合金のキュウリ-温度はドゥジャンヌ定数から予想される値よりも低く、また磁気モ-メントはFe_2Zrの値よりも小さい。されらの結果はFe中でCeが価数揺動をひきおこし、3価よりもむしろ4価として働いているためである。構造解析の結果、Fe_2Ce構造は他の希土類金属を含む合金の場合と比較すると、最近接原子数や原子間距離が著しく異なることが明らかになった。また、水素吸蔵により、構造と共に磁気的性質が大きく変化することも確認された。Fe_<R(R:希土類金属)の密度はRの密度に対してプロットすると、きれいな直線で表わされるが、Fe_2>Ceの密度はそれよりも高い値となる。またFe-Ce系において広い組成範囲で密度を求めたら一見奇妙な結果が得られた。すなわち、CeはFeよりも軽いのでVegardの法則に従うならば、Ceの増加と共に密度は減少するはずであるが、10〜35%の範囲ではわずかながら増加する。この現象もCeがFe中では3価から4価に変動すると考えれば理解される。 希土類金属は大きなスピンー軌道角運動量を持ち, アモルファス合金の場合はランダム軸異方性の原因となり, 低温で大きな保磁力を示すことになるが, Fe_2Ceの場合はそのような現象は見られない. このこともCeが3価ではなく4価として働くために磁気モーメントを失うと考えると理解される. 以上述べた事実より, Fe-Ceアモルファス合金は典型的な価数揺動物質であることが結論される. なお, アモルファス合金においては, 構造上のランダム性のため, 電子の平均自由工程が短くなり, 電気抵抗率は結晶の場合よりも1〜2桁大きくなる. その結果, 価数の変化に伴う電気抵抗への影響は確認できる程顕著に現われなかった.
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