研究概要 |
製鋼過程でのスラグーメタル間の酸素とりんの分配への正則溶液モデルの適用の成功に引続き, 本研究では本実験と既報の全実験結果も含めて, マンガン分配平衡を定式化するため, スラグへの本モデルの整合性を検討した. 第1段階として製鋼過程でのスラグーメタル間のマンガン分配へのスラグ組成の影響を調べるために, MnOを含むスラグ中の酸化鉄の活量を実測した. この目的のために固体鉄, H2O/H2混合ガスとFet-O-SiO_2-MnO3元系またはFetO-SiO_2-MnO-MxOy(MxOy=CaO, MgO, Na_2OP_2O_5)4元系スラグ間の科学平衡を測定し, 陽イオン間の相互作用エネルギー値を算出した. ここでFetO-SiO_2-MnO系はマンガン分配を考察する上での基本系であり, CaOとMgOは製鋼過程での基本スラグ成分であり, Na_2Oは溶鉄処理, 溶鋼2次精錬での同時脱りん脱硫剤であり, P_2O_5は脱りん過程での生成物である. 第2段階として1550〜1650°Cの温度域でAr雰囲気下, スラグー溶鉄間のマンガン分配を実測した. 正則溶液モデルの整合性を確認するために本研究で対象としたスラグ系は(Mn, Fe)O飽和FetO-SiO_2MnO系, (Mg, Fe, Mn)O並びに2(Mg, Fe, Mn)・SiO2飽和FetO-SiO2-MnO-MgO系, (Ca, Mn, Fe)O飽和FetO-SiO_2-MnO-CaO系である. なお本モデルのマンガン分配への整合性を確認するために使用した既報の測定値はKringsら, Maurerら, K〓rberら, Chipmanら, Bellら, Fischerら, 水度らによるものである. 得られた測定結果から酸化鉄濃度が極端に高い領域を除けば, 本実験, 既報の実験全てで正則溶液モデルの関係が満足されていることが確認できた. 得られた平衡関係から, マンガン分配比, LMn=(%MnO)/[%Mn], 各スラグ成分の活量と活量係数はスラグ組成と温度の関数として計算でき, これらのスラグと平衡している溶鉄中のマンガンと酸素の濃度は本モデルから±10%の精度で算出できることがわかった.
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