研究概要 |
銅自溶炉シヤフト部における反応の解析のための基礎データを得るため、まず銅精鉱粒子の着火現象が起る以前の低温度域における酸化反応速度について検討した。平均粒子径72μmの粒子約10mgをアルミナウール内に散布し、O_2ーN_2混合ガス流中で、粒子表面のガス境膜物質移動抵抗が無視しうる条件で非等温酸化反応実験を行った。得られた反応率一時間曲線から、反応率0.2以下の場合には黄銅鉱の熱分解反応律速の速度式が適用され、その反応速度定数k=koexp(ーE_R/RT)において、E_R=13kcal/mol,Ko=0.03mol/cm^2・sの値で反応率の計算値と実測値との一致が得られた。また、反応率0.2以上では、Fesの酸化反応に対応して、反応生成物内のガス拡散律速の速度式が適用された。ガスの有効拡散係数De=Doexp(ーE_D/RT)においてE_D=3kcal/molD_o=0.001cm^2/s程度の値で反応率の計算値と実測値との一致が得られた。 さらに、内径2cm、高さ2mの垂直反応管内に上と同じ粒子径の銅精鉱粒子をO_2ーN_2混合ガスとともに落下させ、酸化・溶融過程について検討を加えた。反応管上端から60,120,180cmの位置で粒子をサンプリングし、S分析によって反応率を求めるとともに、粒子の顕微鏡観察ならびにX線回折によって生成物の同定を行った。一方、粒子の反応速度式の他に熱および物質移動を考慮して反応モデルを作成し、実験結果と対比させながら反応の進行について検討した。このモデルでは、上述の研究結果に基づいて、反応率0.2以下では化学反応律速、0.2以上では粒子内が2拡散律速の速度式を用いた。検討の結果、粒子が800K程度の着火温度に達した時点で十分な酸素量があれば、粒子温度はその反応熱によって急激に上昇し、反応管内の滞留時間0.4秒程度の短時間で粒子が溶融することが明らかになった。
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