研究概要 |
まずはじめに、簡単な系として原料ガスにBCI_3、H_2を用いて、タングステン基板上にホウ素薄膜を生成させ、反応解析を行った。ガスの総流量および温度を変化させて、物質輸送律速段階と表面反応律速度段階に分けることができた。活性化エネルギーの値は、高温側では17.1KJ/mol、低温側では127.9KJ/molであった。表面反応が律速段階と考えられる総流量、温度に対して、分圧を変化させた結果、蒸着速度は水素分圧の平方根、BCl_3分圧の1/3乗に比例した。Langmuir-Hinshelwood機構に基づくHougen-Watsonの式の反応次数と比較することにより、ホウ素蒸着反応律速の場合では反応表面からのHCIの脱着が律速であることが示された。次に、原料ガスとしてH_2,N_2,TiCl_4を用いTiN薄膜を蒸着させ、反応解析を行った。活性化エネルギーの値は、高温側では47.3KJ/mol、低温側では101.3KJ/molであった。表面反応が律速段階と考えられる条件では、蒸着速度はそれぞれ水素と窒素の分圧の平方根に比例した。TiCl_4分圧を増加させると蒸着速度は減少を示した。実験から得られた結果とHougen-Watson式を比較することにより、律速段階として、反応表面の水素原子と窒素原子の反応の可能性があること、あるいは水素の吸着と窒素の吸着が蒸着反応の競合律速となる可能性があることが示された。これらの原子による表面被覆率は、競争吸着のためTiCl_4の分圧が増すにつれて小さくなると考えられる。また、表面反応律速の条件下で、253.7nmの光を照射した場合のTiN蒸着速度への影響について調べた。光をガスのみに照射した陽合に蒸着速度は熱CVDに比べて小さくなった。これは、光照射により活性なTiCl_4が生成して活性点を占めるTiCl_4の割合が熱CVDの場合より増えて、律速である反応種である水素原子や窒素原子が活性点に吸着するのを妨げたためであると推測される。光を基板にあてた場合は、いわゆる光触媒作用によりTiN生成反応の促進が見られた。
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