研究概要 |
Cu-Zn,Al-CuおよびAl-Si合金で凝固の進行に伴う破断挙動を、試験片の最終凝固部での局部伸びを"みかけの変形能(以下変形態)"と規定し、これと引張強さとで検討し、つぎの新しい知見を得た。1〕合金の凝固過程は定量的に、明確なつぎの4段階に区分される。ステージ【I】:凝固開始から収縮開始固相率(fa)までの、試験片がその形状を維持できず、変形能(8)が測定できない状態。ステージ【II】:faから強度発生固相率(fb)までのδが急激に減少する状態。ステージ【III】:fbから強度急増固相率(fc)までの強度の発生およびそれに続く増加が認められるもδが小さく、ぜい弱な状態。ステージ【IV】:凝固完了までの引張強さとδが急増する状態。2〕固溶体合金では、溶質量の増加に伴いfa、fbが低く、δが小さくなり、最大固溶限付近の組成で最もfa,fbが低く、δは小さい。包晶や共晶を晶出する合金ではfa,fbが高く、そしてδは大きくなる。また黄銅で、初晶がα相の固溶体合金では、初晶β相の固溶体合金よりもfa,fbが低く、δは小さい。3〕合金の凝固組織の形成過程:(固相率、デンドライトセルサイズ,結晶粒径,晶出相の形状および種類)と、それに伴う残留液相の挙動とが、凝固の進行に伴う引張強さや変形能の変化、そしてその組成依存性を支配する主要因である。4〕合金の鋳造割れ性は、凝固過程での最もぜい弱なステージ【III】での性質に強く支配され、fbが低く、δの小さい合金ほど割れやすい。以上1〕〜4〕から、5〕鋳塊の最終凝固部での鋳造割れ発生を予測する定量的解析法として、最終凝固部での臨界変形量と加わる鋳塊の熱収縮量の大小を比較する方法を考え、本研究のすでに固相率との対応でδが測定されている黄銅で鋳造割れ試験を行い、方法の妥当性を実証した。なお6〕Al合金でエビーム型鋳造割れ試験鋳型によりAE法による、凝固の進行、鋳造割れの動的観察を行いAE法の有効なことを確認した。
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