研究概要 |
水素吸収法は固相-気相反応によるアモルファス合金の新しい作製法として最近, 多くの関心を集めている. しかし, アモルファス相の生成条件, 生成過程, 生成機構および得られたアモルファス合金の構造や物性はほとんど不明である. 本研究では以下の事項を明らかにした. (1)水素吸収によってアモルファス化する合金系 水素吸収によってアモルファス化する合金系を探索するために多くのR_XM_<1-X>(Rは希土類元素, MはFe, Ca, Ni)化合物の水素吸収に伴う構造変化をX線解析, 透過電顕観察, 熱分布および磁気的性質の変化で調べた. その結果, ラーベス相RM2が化合物は低温領域では水素を固溶し, 高温領域ではRH_2とMに分解するが, 両者の中間の温度領域でアモルファス化することが分った. (2)水素吸収によりアモルファス化した合金の構造と磁気的性質 水素吸収によってアモルファス化した合金の磁気的性質はスパッタ法や液体急冷法で作製したアモルファス合金に同量の水素を吸収させたものとほぼ等しく, 両合金の構造は類似すると考えられるが, これはX線構造解析によって確かめられた. (3)アモルファス化の過程 水素が導入されても結晶相にほとんど吸収されず, 代りにアモルファス化した領域が生成し, それが次第に成長する. つまり, 核生成, 成長によりアモルファス化が進行することが分った. (4)アモルファス化の機構 ラーベス相では結晶よりアモルファス中の方が, 水素原子は安定な位置を占める. そのため金属原子が移動できる中間温度領域では系全体のエネルギーを下げるように再配列が生じて, アモルファス化が起ると考えられる.
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