研究概要 |
冷間圧接性に及ぼす表面活性度の影響を調べるために, 商用純アルミニウムを試料としてその表面からの光励起エキソ電子放射(PSEE)と, 圧接後の疲労寿命の関係を, ブラッシング加工後の曝露時間の函数として, その経時変化を検討した. 冷間圧接前にアルミニウム表面はブラッシング加工をしたが, そ表面の活性度はPSEE強度の測定により追跡した. またPSEEは紫外線照射の下で, 極微少電流計法により測定した. 冷間圧接は圧下率50〜65%の範囲で行い, 圧接前の表面処理としては, (イ)ブラッシング直後に圧接, (ロ)100分後および, (ハ)1週間後に圧接の3種類とした. また圧接後, 150〜300°Cで2時間, アルゴン中で焼なまこを行って, 加熱による拡散効果についても検討した. 圧接試料の接合強度は引張り及び疲労試験により測定した. 疲労寿命は試作試験機により, 両張り曲げひずみの下で, 中サイクル疲労範囲(10^5回から10^6回までの)で測定した. 主な研究成果を要約すると次の通りである. (1)PSEEによって評価された圧接前の表面活性度と, 圧接材の引張りや疲労強度との間には, 非常に良い相関関係があり, この関係は300°Cまでの焼なまこによっても変わらなかった. したがって商用純アルミニウムの冷間圧接性は, PSEEの測定により評価できることがわかった. (2)圧接材の疲労寿命はその接合引張り強度に比べて, 圧接前の表面活性度(PSEE)により強く依存することもわかった. したがって冷間圧接性の良否は, 疲労破壊の観点より検討した方がより安全であることがわかった. (3)上記の冷間圧接の研究に関連して, エキソ電子放射現象の工学的応用の例として, 塑性変形した金属表面のひずみ分布を, PSEEの測定により評価しようとする新らしい方法を考案した. 以上に述べたように本研究は当初の計画通りに順調に推移して, 3篇の論文を公表してほぼその目的を達成した.
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