研究概要 |
溶湯選択酸化法は, 酸化物生成自由エネルギーの大きな合金元素を含んだ金属溶湯中に, CO_2ガスを主体とする弱酸化性のガスを吹込んで, 合金元素を選択的に酸化させる. 酸化物分散強化型合金の製造法である. 酸化物を微細に多数均一に分散させることが出来れば, 高い強度と耐熱性が得られ, 地の国溶元素量が減るため, 導電性が同時に改善できる. 本研究では添加アルミニウム量, ガスの塑性, 圧力と吹込量, ガス吹出口の構造, 加熱方法等を変化させ, 最適の製造条件を調査して, 以下の結果を得た. 1.肉厚の黒鉛パイプのせんたん薄いポーラスカーボンを埋込み, 高い圧力でガスをルツボ壁に吹付ける吹出口を設計し, 抵抗炉に代えて高周波炉を用いて加熱するなど, 溶湯が十分に攪拌するよう工夫した. 2.溶湯選択酸化法は実験条件の制御が難しく, 再現性の高い結果を得ることが困難であった. 3.CO_2ガスを吹込むと, 導電性と硬さが上昇した. ガスの吹込量は, 合金元素を全て酸化させる理論的必要量の2〜3倍で最もよい特性が得られた. 4.アルミニウムの添加量が0.5%の場合には, 導電率が低い割りには硬さの上昇が小さかった. 5.アルミニウムの添加量が0.1〜0.2%の場合には, 導電率は高いが, 硬さは未処理の合金に比べて十分高いとは言えなかった. また耐熱性の改善は見られなかった. 6.2〜5倍の結果から, CO_2ガスのみを吹込む方法では, 溶湯選択酸化法の実用化は問題がある. CO_2とCOの混合ガスを用いることにより, 銅の酸化を抑制し, アルミニウム, シリコン等の合金元素の酸化物をより微細でかつ均一に分散させ得る再現性の高い方法を開発することが今後の課題である.
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