研究概要 |
ガスタービンやディーゼル機関などにおける化石燃料燃焼排ガス環境を想定した実験室的高温腐食環境中でのNi基超合金のクリープ破断特性に及ぼす環境側諸因子の影響を解明することを目的として, 以下のようにガス雰囲気槽の製作とこれを用いた種々の実験研究を実施した. 1.腐食性ガス雰囲気槽の製作と性能 ガス雰囲気の組成を制御するために, SUS31OSステンレス鋼シームレス管やステンレス鋼製ベローズ, 耐熱Oリングなどを用いて耐熱・耐食性や気密性に優れた雰囲気槽を製作した. 本装置の耐用温度は約900°C, 到達真空度は10^<-6>Torr.である. 2.種々のガス雰囲気中および腐食環境中でのNi基超合金のクリープ破断特性 Ni基超合金Inconel 751のクリープ試験片表面にNa_2SO_4-NaCl混合塩を塗布するとともに, ガス雰囲気組成(純N_2, 純O_2,N_2-O_2混合ガス使用)を種々変化させた腐食環境中でクリープ破断試験を行い, 破断強度や破断挙動に及ぼす雰囲気条件の影響を調べた. 混合塩を塗布しない800〜900°Cのガス雰囲気中での破断特性は酸素分圧(Po_2)に依存せずほぼ一定で, 大気中の強度とも差異を示さなかったが, 混合塩を塗布した腐食環境中では相当の強度劣化が生ずるとともに, その程度はPo_2に依存することを見出した. すなわち, 低Po_2【less than or equal】T×10^<-3>atm)側では腐食による強度劣化は比較的軽微であるが, それ以上のPo_2雰囲気中では著しい強度劣化を生ずるとともに, データのばらつきや脆性的破断傾向も顕著となった. 破面や断面組織観察などに基づいて, このような強度劣化のPo_2依存性は選択的粒界侵食挙動に対する酸化の寄与の程度と関連するものと考察した. この臨界Po_2の特定に向けて今後さらに検討を進めて行く予定である. また, 冷却水系統のトラブル発生により, 当初の計画よりも2〜3ケ月程度の遅れが出たが, データの蓄積, 整理を早急に行い, 順次公表する予定である.
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