研究概要 |
金属間化合物の中には温度の上昇と共に降伏強度が増大する様な特異な塑性挙動を示す化合物がある. 例えば, L1_2型化合物Ni_3ALは室温で約90MPa, 1000Kで約700MPaの降伏強度を示す. この様な特徴を持つ化合物をセラミックスと金属の接合の中間層に用いることが出来れば, 低温での中間層の塑性変形により熱応力が効果的に緩和されることが期待される. さらに, Cu, Ni等の軟質金属を応力緩和層とする場合に比して高温強度の大きい接合体の得られることが期待される. 以上の可能性を確かめるため, 上記の特異な塑性挙動を示す化合物としてNi_3Al系の(1)Ni_<308>Al_<0.92>, (2)Ni_3(AlB), (3)Ni_3(AlMn)の3種を溶製し, 以下の各項について調べた. 1.金属間化合物とセラミックスの反応について 化合物(Φ10×^t5)とSi_3N_4(Φ10×^t3)を突き合せ3MPaの圧力下で1273〜1573Kの温度に1時間加熱保持しても接合反応は起こらない. しかし, 両者間にNi箔(^t10μm)を挟むと化合物(1)(2)では1573Kで, 化合物(3)では1473Kで接合した. EPMA線分析によると界面には純Ni層は認められず, Niは化合物に完全に吸収されているものと考えられる. 2.金属間化合物による熱応力の緩和効果 熱応力緩和の効果は化合物層の厚みを変えて接合体を作製し, 接合体表面および縦断面上での割れの有無を見ることにより調べた. 接合はSi_3N_4(Φ8×^t3)をNi箔と化合物層を介してSUS304(Φ8×^t7)で挟み, 1.と同条件下で行った. 応力緩和層の薄い場合(^t0.1〜^t0.3mm)は, 化合物の種類に依らず接合面から0.5mm程度離れたSi_3N_4の表面を起点として内部, 界面に向って割れが進行する. 応力緩和層が1mm厚程度になるとSi_3N_4の外周表面には割れが認められなくなる. かくして, 高温で非常に高い降伏強度を持つ化合物を応力緩和層として用い接合体を作り得ることが明らかになった.
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