研究概要 |
1.ステンレス基板にアルミナをプラズマ溶射するセラミックスコーティング材に生じる残留応力の発生メカニズムを解明するため溶射中の過渡的熱変形を実験的に調べた. すなわち板厚の異なるステンレス基板(板厚1mm, 3mm, 5mm)に同一溶射条件(1回の溶射皮膜の厚さ0.01mm)で溶射を繰り返したときの基板の温度分布および熱変形の時間的変化を詳細に観察した. 溶射を繰り返していくと一般に基板は溶射側に凹の変形を増加させるが, これは時間的に単調なものでなく, 溶射トーチの通過直前, 直後で小さな増減を繰り返しながら全体として増加する. 次に溶射後(皮膜厚さ1mmで終了させた)コーティング材が冷却中には逆の変形, すなわち溶射側に凹の変形が減少するようになる. そうして常温まで冷却すると, 基板厚さ1mmの場合では溶射側に凸の変形が, 3mm, 5mmの場合では凹の変形が残っていることが明らかとなった. 2.上述の観察より, セラミックスコーティング材の熱応力および残留応力はセラミックス皮膜と基板金属の熱的特性の差に起因するマクロ的な熱応力と, 溶射中のセラミックス皮膜および基板金属中の非定常温度分布に起因するミクロ的な熱応力の両者を考慮する必要がある. そして, これを考慮すると基板厚さ1mmの場合は引張の残留応力, 3mm, 5mmの場合は圧縮の残留応力となるという, 実験結果が矛盾なく説明できた. 3.セラミックス皮膜および基板金属内の非定常温度分布を考えた熱弾塑性応力解析を理論的に行い, コーティング材の熱応力問題を一次元熱弾塑性問題にモデル化して数値シミュレーション出来る手法を確立した. そしてこれによるシミュレーション結果は上述の実験結果による観察とよい対応をなしていた. これによりセラミックスコーティング材の熱応力・残留応力が理論的に推定することが出来る.
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