研究概要 |
二重共鳴法はNQR(核四極共鳴吸収)核と共存するNMR核との二重共鳴を利用する方法であり、在来のNQR測定法に比べ、著しく感度が高いがシステムが複雑で、その高性能化が遅れていた。NQRの適用が期待されている分野-例えば触媒や機能性セラミックスなど(これらには多くの場合水素が含まれていない)-には利用しづらかった。本研究では、二重共鳴法の適用範囲を拡大するため、NMR核として【^1H】以外の【^(19)F】,【^(23)Na】,【^(27)Al】等を利用する回路を設計,作製して、【^(19)F】と【^1H】をともに含む5-フルオロウラシルについて【^(19)F】をNMR核とした場合を【^(14)N】のNQRを【^1H】をNMR核とした場合と比較した。【^(19)F】をプローブとした場合も【^1H】と同様なNQRスペクトルが観測できた。【^(19)F】プローブによる測定を5-フルオロウラシルのいくつかの誘導体についても行い、満足すべき結果が得られている。NMR核が【^(19)F】のときと【^1H】のときとで、共鳴周波数や吸収の形状が微妙に異なっていることにから、分子内における窒素原子と水素原子,窒素原子とフッ素原子間の相互作用のちがいを反映しているのではないかと推定し、解析を急いでいる。新たな知見が得られる可能性がある。 また、触媒に二重共鳴法NQRを適用するための予備実験として、酸化ビスマス-酸化モリブデン系触媒をその組成比を変化させながら発振器法によって【^(209)Bi】のNQRを測定した。その結果、核四極結合定数(【e^2】qQ/h)については変化はほとんど見られなかったが、非対称性定数(η)については変化が見られた。この系では組成の変化と触媒活性との間に密接な関係があることが知られており、NQRから得られるデータが、触媒活性の研究,触媒設計などに重要な知見を与えうることを示唆した。
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