研究概要 |
海洋表層水中におけるフミン物質の役割解明の一環として、金属イオンとフミン酸・フルボ酸との相互作用の観点に立脚し、フミン物質中に濃縮されている金属のスペシエーションと無機物質の挙動について検討した。 1.海洋フミン酸中に含有される金属と無機元素との関係:種々の海域で採取した海底堆積物中より、アルカリ性水溶液で抽出し塩酸を加えて沈澱させて得たフミン酸を、アルカリへの溶解・酸による沈澱を繰返して精製し、最後にイオン交換樹脂を通して酸型フミン酸とする。この様に精製したフミン酸には、灰分が多い試料で20%、少い試料でほぼ0%含まれている。フミン酸を硝酸と過塩素酸で湿式灰化後、誘導結合プラズマ発光分光法により多元素を分析すると、いずれの試料にも鉄,アルミニウムが多量に含まれていたが、灰分の多い試料ではその他にケイ素,リンなどの無機元素が多かった。灰分の多い北太平洋(43゜18.2′N,154゜22.8′E,5385m)のフミン酸を弗化水素酸で洗淨し、洗淨前後の各元素の増減を調べた。その結果、アルミニウム19.6→10.3,鉄56.0→28.2,マグネシウム6.1→1.8,ケイ素4.2→2.3,チタン1.2→0.83,銅1.1→1.2,カルシウム0.2→0.18(いずれも%)の変化があった。灰分は21%から10%へ減少した。鉄,アルミニウム,マグネシウム,ケイ素の減少が著るしく、灰分の多いフミン酸は粘土鉱物との強い結合のあることが示唆された。従って、灰分の多い試料の各元素含量の中には粘土鉱物からの影響が大きい場合があり、注意が必要である。 2.フミン酸と金属との相互作用:フミン酸中に強く結合している銅の結合状態を調べるため、回転リングディスク電極を用いて銅とフミン酸との錯体形成について検討した。フミン酸は白金の電極に吸着し、また一部は銅と錯体をつくり、銅の還元電流を減少させる。今後詳細な解析を行うことにより、相互作用の解明が期待できる。
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