研究概要 |
〔炭素の定量〕 酸素気流中で燃焼が困難な試料からの炭素の抽出にクロム酸-硫酸を用いた湿式酸化分解法を応用する場合, 金属試料の急激な分解に伴って発生する水素による爆発をなくすために, 窒素をキャリヤーとして使用した. その結果, 急激な分解による爆鳴気反応もなく, 酸素を用いた場合と同様の精度と正確さで炭素を定量できた. また, パラジウム膜透過により水素だけを分解する方法を導入したところ, キャリヤーガスが酸素でも爆発を充分に避けることができた. この方法により, チタン合金, 高純度インジウム及びカリウム中の1ppm以下の極微量炭素も定量可能であることが分かった. 一方, 燃焼困難といわれる金属に従来の酸化燃焼法を応用するため, 助燃剤についても検討した. 高純度ケイ素の場合には鉄とスズのそれぞれ試料量の2倍以上を助燃剤として用い, 1400°Cで完全に燃焼できることを見いだした. また, 粉末タンタルでは試料の2倍量のスズが, モリブデンを含むチタン合金では試料の2倍量の銅が助燃剤として最適であった. 実際にそれら金属中に含まれる数ppmから数十ppmの炭素を高い精度と正確さで定量できた. 〔水分及び水素の定量〕 岩石試料を100°Cから階段状に昇温し, それぞれの温度で放出された水分を電量滴定して水の存在状態を解析した結果, 全抽出水分量の約40%は100°Cで放出される吸着水であり, 450°C付近で結合水の放出がみられた. 〔硫黄の定量〕 試料を鉄(II)・強リン酸で分解して硫黄を硫化水素として分離抽出し, それを電量銀滴定する方法を検討した. 硫酸カリウム標準溶液中の1.1〜27.9μgの硫黄を定量した結果, 硫酸イオンは定量的に硫化物イオンに還元され, 満足できる精度と正確さが得られた.
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