酸化物粉体は磁性材料、センサー、触媒、顔料、研磨材あるいは金属の耐腐蝕性皮膜などとして用いられる重要な機能性材料であるが、粉体はその調製履歴が異なると反応性が大きく変化し、固相反応の速度や反応のおこる温度、電気的性質などが著しく変化する。この現象は無機材料、セラミックスの製造、プロセッシングに関連して極めて重要でるあるが、粉体の反応性や物質は非常に多くの因子が複雑にからみあって決まるため、まだ未解決の問題が多く残っている。本研究はFe_2O_3、V_2O_5、M_nO_2、Al_2O_3等の酸化物について、その調製条件と反応性との関係について検討したものである。α-Fe_2O_3に関してはKClO_4の熱分解反応に対する触媒活性、ZnOとMgOとのスピネル生成粉体反応、V_2O_5との粉体反応、α-FeOOHからα-Fe_2O_3の生成過程について、V_2O_5に関しては上記のFe┣D22O┣D23┫D2との反応とSO┣D22┫D2との気相反応、MnO┣D22┫D2に関しては水溶液系における表面水酸基の酸塩基解離およびZn┣D12+┫D1イオンの吸着挙動について、さらに金属上に生成する酸化物皮膜はAl上のAl┣D22┫D2O┣D23┫D2、不銹鋼上のZr(IV)-Cr(III)、Tc(IV)-Cr(III)複合酸化物皮膜について検討した。α-Fe┣D22┫D2O┣D23┫D2の調製温度を高くすると、KClO┣D24┫D2の分解触媒活性が低下し、ZnO、NgOとの粉体反応速度も小さくなる。 また粒子間の接触状態が粉体反応においては重要な因子となること、ZnOのような比較的低温で気体となるものは反応初期に表面反応と思われる速い反応がおこることを明らかにした。無定型含水酸化鉄からα-Fe_2O_3を調製する時、Cu^<2+>などの異種金属イオンを添加するとα-Fe_2O_3への転移が抑制されるが、添加法により抑制効果も異なる。MnO_2表面には酸点と塩基点があるが、その数はMnO_2の調製法により余り変化しないが、解離定数が変わることが明らかになった。アルミニウムを熱水処理するとにより生成する水和アルミナ皮膜の構造をFTIR法で解析できることがわかった。
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