研究概要 |
金属リン化物は半導体材料(リン化ガリウム, リン化インジウム等)として実用化されてお, リン化物の生成反応を調べることは興味深い. また, リン蒸気およびリン化合物による装置材料の腐食という問題があり, これらに対する耐食金属材料の開発研究も必要となっている. これらのことから, この研究は, 種々の単体金属および合金のリン蒸気との反応について, 反応条件と生成物組成との関係, 反応速度, 反応機構などを明らかにする目的で行ったものである. 金属リン化物の生成反応に関する研究の一環として, まずマンガンのリン化反応の実験を行った. 400°〜600°, リン蒸気圧1atmの反応条件下で, 反応はすべて放物線速度則にしたがった. それゆえ, 律速段階は拡散過程と思われる. マーカー実験法を適用した結果, 拡散種はマンガンであることが示された. X線回析および電子線マイクロアナライザ分析によると, 生成物被膜の外層はMnP, 内層は,Mn_2Pからなる二層構造であった. 引き続いて, ニオブ(650°〜800°, 1atm)およびタングステン(800°〜1000°, 1atm)のリン化反応を調べたところ, いずれも放物線則にしたがって進行した. さらに, モリブデンについてもリン化実験を行ったが, モリブデンは最初直線速度則に, 後期段階は放物線速度則にしたがった. 反応初期段階におけるメカニズムについては検討中である. 合金については, Fe-Cr, Fe-Ni, Ni-Cr, Fe-Cr-Ni系のリン化実験も行っている. 反応速度に及ぼす原子価効果の実験から, 反応は陽イオン空孔を介しての拡散過程が支配的であることが明らかとなった. 放物線速度定数は次の順序で低下した. Ni>Mn>Fe>Cr>Ti≒Nb>W. 金属リン化物の相安定性を論ずるに必要な熱力学量としての平衡解離圧の測定は継続実験中である. また, リン化物の光半導性ついても検討中である.
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