研究概要 |
従来, 金属アルコキシド等からの無機材料の調製は多数報告されているが, これらは金属・酸素結合が動き易いため原料の状態です不安定である. 本研究では, 安定な金属・炭素結合有する有機金属錯体及びその分子集合体を設計し, ついで, その無機化による無機材料の創製のための基礎的検討を行った. 即ち, 長鎖アルキルベンゼンとフェロセンとの配位子交換反応, 並びに長鎖アルコール或いはアミンと相当する(クロロベンゼン)-あるいはクロロカルボニル型-カチオン錯体との反応で, 長鎖アルキル, 並びに, アルキルーオキシ, アミノ, カルボニルオキシ, カルボニルアミノ, オキシカルボニル, 或いは, アミノカルボニルベンゼン)=シクロペンタジェニル鉄(+)錯体(A)=トリカルボニルマンガン(1+)錯体(B), 及びコバルチセニウム(1+)錯体(C)を合成した. これら(一般に炭素鎖長8〜12以上)の希薄水溶液は表面張力が低下し, 臨界ミセル濃度は, そのアルキル鎖長および金属カチオン部位の構造に依存し, 10-2〜10-5mol/dm3の範囲で変化し, また錯体の還元電位は-0.9〜-1.4Vであり, 還元剤が共存すると界面活性能を失った(新規レッドクス感応性界面活性物質). 更にA〜C或は(オクタデシルオキシベンゼン)トリカルボニルクロム(D)の会合状態をLangmuir-Blodgett法で測定し, 錯体構造との関係を検討した. A〜Dは単分子膜或は累積積膜となり, 基板上に各種金属を含む分子をかなり規則正しく配列できた. 更に, 長鎖アルキルテルロニウム型界面活性物質(E), 陰および陽両イオンに親和性大で, 無機塩の溶解性大の有機スズ基を有するポリエーテル(F)を合成した. 次にガラス板上に調製したA〜Fの薄膜を高温酸化して無機薄膜を生成させ, 表面の性質の変化を検討した. 最後に, 有機ケイ素基を有するフェロセン等, 鉄, クロムの単核あるいは複核錯体を高温高圧分解しα-鉄およびFe3Siを含む磁性炭素微粉体を得た.
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