研究概要 |
遷移金属酸化物を含むリン酸塩ガラス中で鉄, バナジウムリン酸塩ガラスは, 非常に高い導電率を持っておりサーミスタ, センサー, スイッチング素子等えの応用が期待される興味あるガラスである. 本研究では, バナジウムを含むV_2O_5-P_2O_5系とV_2O_5-B_2O_3-P_2O_5系のガラスについて, 電気的なキャリヤである電子の挙動を直流導電率, 誘電率, 誘電損失, 内部摩擦を測定し解析を行なった. その結果, 導電率の温度依存性は, いずれのガラスも直線性を示し, 30〜100°Cの間でlogσ=-6〜-3(S/cm)の非常に高い値を示した. また, B_2O_3を導入した3成分系ガラスは, B_2O_3を含まない2成分系ガラスよりも約100倍高い導電率を示した. この原因を超低周波まで測定可能な内部摩擦によって詳細に検討した結果, B_2O_3を導入したガラス中にBVO_4が形成し, この量に依存してマトリックス中のV_2O_5濃度が上昇し, V^<+4>【double half arrows】^<5+>のホッピング伝導が上昇するためであることを見い出した. 又, 電気的性質と内部摩擦の測定結果から1.内部摩擦と誘電吸収のピークから計算した活性化エネルギーが, 一致し内部摩擦で観察されたピークは, 誘電緩和現象と同様にV^<+4>【double half arrows】^<5+>間の電子のホッピングにもとずく事が明らかとなった. 2.内部摩擦により観察されるピークを, ガラス中に含まれる遷移金属のモル数で割った値を, 価数比(R=V^<+4+>/V^<4+>+V^<5+>)に対してプロットすると半円の規格化曲線が得られた. この事は, 2種の遷移金属を含むガラスの様に, お互いのイオンの相互作用のため化学分析が出来ない組成のガラスでも, 内部摩擦のピークが観察されれば, 逆にガラス中に含まれる遷移金属イオンの価数比を求めることが出来るという画期的な成果が得られた. 今後の研究の展開は, ホッピング伝導においてキャリヤとして電子の挙動について解析して来たが, MnO-P_2O_5系の様に正孔が関与するガラスについても, 電気的性質と内部摩擦の関連性を検討して行く積りで準備している.
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