研究概要 |
次代のシステムやデバイスを担う新材料の開発は, 素材の探索とともにそれらの複合集積化によって創り出される人工機能に大きく依存するようになろう. 薄膜化技術は, こうした機能の設計に適しているだけでなく, 新物質の合成手段としても興味深い. 本課題においては, エネルギーおよびエレクトロニクス用デバイスとして注目されている代表的超イオン伝導体のNaβ-アルミナおよびNa_2O-Al_2O_3系化合物を薄膜状態で合成し, 生成膜のイオン伝導を支配する(1)微細構造, (2)イオンパス, (3)異相間相互作用などの基礎的要因を解析することによって新しい複合機能をもつ高イオン伝導材料の基礎開発を行なうことを目的として研究を進めた. Na_2O-Al_2O_3系薄膜は, α-Al_2O_3単結晶基板上にスパッタ蒸着をしたアモルファス薄膜の熱処理によって合成し, SAW吸収実験は, 圧電体上を伝搬する表面波の2つの性質, 表面圧電電界と弾性ひずみ, を利用して SAW-伝導イオン間の圧電結合および局所歪結合をそれぞれ独立に分離して解析できるように工夫した. 2年間の研究で得られた主な成果は, 1.高周波スパッタ法の採用によって, 従来困難とされていた薄膜化に成功するとともに, 薄膜の高イオン伝導をもたらす緻密な粒界組繊と結晶子の優先配向の効果を明らかにした. 2.表面弾性波(SAW)を用いた新しいイオン運動解析法を開発し, その有効性を明らかにするとともに, 伝導イオンと表面波の結合機構を解明した(3). 3.表面波は, 伝導イオンに対して, 誘起圧電電界を介して強く結合するとともに, SAWが誘起する局所的な格子歪を介して結合することを検証し, 伝導イオンー格子系における圧電結合を局所歪結合の存在を明らかにした. 4.β-アルミナのイオン輸送は, 対をなすNaイオンの協同的なイオンジャンプによって起こることを明らかにした.
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