研究概要 |
湿式合成したBaTiO_3粉体(約7m^2/g)を用い, それに外部電場を印加することにより, 強誘電体表面の表面電場の大きさを変化させ, 吸着力の制御の可能性を検討した. 吸着質としてCCl_4,CHCl_3,CH_2Cl_2,H_2O,CH_3OHを用いた. まずBaTiO_3粉体の性状を, (a)X線回折, (b)IRスペクトル, (c)SEM観察, (d)密度測定から調べた. ついで表面性状を良く吟味した上でH_2O,CH_3OHの吸着性を検討した. 最後に外部電場を印加した場合の吸着性変化をクロロメタン類の吸着熱変化から議論した. 合成BaTiO_3はH_2O,CO_2を化学吸着しており, これらの不純物は1000°C,13hr,加熱脱気後, 800°C酸素雰囲気下で処理することにより除去された. H_2O,CH_3OHは各々化学吸着するが, CH_3OHの場合は立体障害が起こるため, 化学吸着量はH_2Oの場合に比較して少なかった. 一方クロロメタン類の吸着では, 吸着熱は吸着質の双極子モーメントの増大につれほぼ直線的に増加することを見いだした. クロロメタン類のロンドンの分散力による吸着ポテンシャルは計算の結果ほぼ同じ大きさであることから, 吸着熱の差異は主として吸着質が持つ双極子モーメントの表面電場への配向力の大小にもとづくものと判断された. また試料をDC5KV/cmの電場で13hr室温分極させ, 外部電場DC2KV/cmを印加してクロロメタン類の吸着性を吟味した. 等量吸着熱は外部電場を印加することにより顕著に変化した. すなわち無極性物質であるCCl_4は外部電場の影響を全く受けなかったが極性なCHCl_3,CH_2Cl_2は外部電場の印加により吸着熱は15〜20%増加した. 吸着熱は双極子モーメントの増大につれて直線的に増加したのでその直線の傾きから表面の電場の強さが計算される. 外部電場を印加しない場合, 表面電場の大きさは, 1.2×10^5cgs静電単位に対し, 外部電場を印加すると, 2.3×10^5cgs静電単位となり, 電場を印加することにより極性物質の吸着力制御の可能性を見いだした.
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