研究概要 |
固体高分子電解質(SPE)燃料電池のSPE材料として用いられるペルフルオロスルホン酸カチオン交換膜ナフィオンを通しての気体の透過を詳細に検討した. その結果, 気体はナフィオンの無定型非晶質領域を通る経路によって非常に速い速度で透過することがわかった. この経路はナフィオンのもつミクロ相分離した特異な構造から生じている. この経路は疎水性の強いテトラアルキルアンモニウムイオンやセシウムイオンによって影響を受け, これらのイオンは気体の透過を遅くする. 同様に, ヘキサンのような疎水性有機物もこの透過経路を占め, 気体の透過を制御する. SPE電極の片面で酸素, 水素を発生させ, 残る片面へそれらの気体が透過する速度を測定した. その結果, ガス発生条件下では気体の透過が著しく, 大気圧と気体と接触する場合の約十倍の速度で透過する. これは気体発生時に電極近傍で過飽和状態になることに起因することがわかった. 上述の経路を通る気体の透過は電流値が大きくなると大きくなく. また, その時の拡散係数は電流を通電していないときよりも大きくなる. これは, 通電によって電極の方向にイオンが移動し, これによって上述の疎水性の配向が変わり, 透過に都合のよい配向をとることによると考えられた. この透過経路の存在はナフィオンが架橋していなく, 疎水性部分のファンデルワールス力のみによってその形状を保っていることに原因がある. また, 通電による気体の拡散定数の変化もこのナフィオンの柔軟な構造のためである. ナフィオンの気体の透過を制御するためには膜の構造を架橋構造にするのが最も有効である. しかし, ペルフルオロ膜を架橋するのは通常の方法では困難であり, プラズマ重合の手法を用いることが有効である. プラズマ重合によってペルフルオロスルホン酸の薄膜を得る可能性を見い出した.
|