研究概要 |
ニオブ, モリブデンポルフィリンは光化学的に酸素分子を活性化し, オレフィンを選択的にエポキシ化する. この反応は, 錯体の光還元, 還元錯体に対する酸素分子の配位, 基質への酸素原子の伝達の機構を含むものと考えられる. この反応に関して, 以下の知見を得た. 1.溶媒, 混在する化学種の効果 アルコール, フェノール等配位性酸素原子をもつ分子が混在する場合には, 嫌気条件下で錯体の光還元は促進される. オキソ型5配位ポリフィリン錯体が生成し, さらにアルコールあるいはフェノール類が配位した還元種が得られる. しかし, アルコール類の混在は, 酸素配位錯体の失活を促進する. 一方, フェノールなど強い配位能力をもつ分子の混在は還元錯体に対する酸素配位を抑制する. 2.ポリフィリン配位子の構造の効果 ポリフィリン配位子にピケットフェンス型置換基を導入した場合に, 基質との立体反発による反応性の低下が予測されたが, 立体反発による反応の抑制は, ノルボルネン, シクロドデセンのようにきわめてかさ高い基質にたいしてのみ認められ, 他の場合には反応性の顕著な向上が認められた. この事実は, フェンス型置換基による酸素化錯体の保護によるものとして説明される. また, フェンス型置換基の導入は基質選択性も著しく向上させることが明らかとなった. 3.酸素移動過程の機構 シスーあるいはトランスーオレフィンを基質とした場合に, シスあるいはトランスの配置が保持されて反応が進行することが明らかになった. また炭素数10以下程度のオレフィンにかんしては, アルキル置換基の数が反応活性に大きな影響を持つことが明らかとなり, イオン機構によって酸素移動が進行するものと考えられた. 以上より, 光化学的酸素活性化に対して酸素配位錯体を安定化し, 保護することが最大の要因であることが示された.
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