研究概要 |
液相懸濁触媒をその活性を損わずにポリマー等に包埋固定化して使用できれば, 触媒の回収が容易になるのみならず, ポリマーの疎水性を利用した新しい触媒プロセスの開発など, いろいろな効用が期待できる. 本研究では, シリコーンゴムなどのゴム状ポリマーが無孔質にもかかわらず高い物質透過能を有することに着目して, シリコーンゴム中に微粒子触媒を分散固定化する方法を検討すると共に, その触媒性能をアセトンの水素化および不飽和脂肪酸の水添をモデル反応として調べ, 以下の成果を得た. 1.触媒活性はシリコーンゴム包埋により約1桁低下するが, 特に高活性な触媒の場合を除いて, 触媒有効係数は1に近く, シリコーンゴム中の各反応成分の拡散過程は律速段階とはならないことがわかった. 2.気・液および液・シリコーンゴムの各界面で反応成分の溶解平衡が成立する場合, 気相固体触媒反応における触媒有効係数の理論が本触媒系にも適用できることがわかり, 包埋触媒を設計する上で有用な知見が得られた. 3.シリコーンゴム包埋による活性低下の原因として, 硬化時に発生するオキシムなどの化合物およびポリマー自身が触媒毒として働くこと, および触媒細孔内にシリコーンゴムが浸入して反応成分の細孔内拡散を妨害することが示唆された. 4.逐次反応における中間体の選択率は触媒をシリコーンゴムに包埋することにより著しく低下することを認め, その原因が担体ポリマーのカゴ効果によることが示唆された. 異常, 2年間の研究においてシリコーンゴム包埋触媒の設計・製作・性能に関し有益な知見が得られた. 今後は担体ポリマーの疎水性を利用した反応, たとえば水共存下での選択的有機合成反応などへ本法の拡張を試みる予定である.
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