研究概要 |
バガスを20〜80°Cの1〜4%NaOH溶液に1時間浸漬後, 3倍に絞りよくほぐして被酸素蒸解試料とした. この試料をガーゼに含み, 底水100mlの張ってあるオートクレープの中皿の上に置き密閉後, 空気を酸素で数回置換して除き, 酸素初圧5kg/cm^2, 酸化温度120°Cで1時間酸素蒸解した. この結果, 2〜3%NaOH溶液に40〜60°Cで浸漬して得たパルプは, これまで同条件で得た稲わらパルプよりも10%位高い収率を示46〜55%であった. またバガスパルプの紙の物理強度は比引裂度に改良すべき余地はあるものの全般的に良好な値を示し, 単独使用も充分可能な強度を有しているように思われた. さらに, 気相法でオゾン漂白を行なった結果, 紙力の低下なく, 白色度を20ポイントも向上させ, それ以上の漂白を行なわなくとも下級紙として十分使用し得るものであった. なお, 高ペントザン含有量に由来する低不透明度も稲わらパルプの混入により十分改良できる見通しを得た. ササをアルカリ・酸素蒸解する場合, 組織形態が木材に類似しているのでバガスよりも強い条件で材中へのアルカリ浸透を行なう必要があった. 酸素蒸解条件はこれまでと全く同じ条件に設計し, 種々の対チップアルカリ濃度を設け検討したところ, 18%以上のアルカリ量と100〜120°Cの処理温度が必要であった. 得られたパルプからの紙の物理強度は, 良好な値を示し十分使用可能なものであった. しかし, ササの化学的成分組成から推察できるように1%NaOH抽出量が40%と他のパルプ材に比べて非常に多く, 得られたパルプ収率が44〜39%と低く, 収率増加剤とされている水素化ホウ素ナトリウムの添加効果も非常に低かった. このことから, ササをパルプ化するためには, アルカリ媒体を用いないTMP法あるいはNSSCP法での蒸解が有利であるように思われた.
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