研究概要 |
触媒量の三塩化ルテニウム存在下に次亜塩素酸イオンを助酸化剤としてキノリン(Qu)を酸化させると, アルカリ水溶液中でQuは速やかに酸化開裂反応をうけ, 高収率でキノリン酸(ピリジンー2, 3-ジカルボン酸:QA)が生成することを初めて見出した. また水溶液中の水酸化物イオン濃度を増加させると, 主生成物がQAからシュウ酸(OA)へと変化することを見出した. 本研究では, キノリン酸化反応における生成物選択性に及ぼす高原子価ルテニウム触媒の作用機構をあわせて明らかにした. すなわち, 反応溶液中の水酸化物イオン濃度が変化すると, 本反応では生成物への選択性が3通りに変化した. これは水溶液中の触媒活性種がOH^-濃度により変化するためである. OH^-初濃度が0.55〜1.1Mのとき, [RuO_4]^-(吸収極大:385nm)が触媒活性種となり, キノリンは速やかに酸化開裂されて定量的にQAを生成した(QA単離収率84%). OH^-初濃度が0.50M以下の場合, 反応の途中まで生成していたQAは水溶液中のOH^-濃度が0.20〜0.24M以下に低下すると急激に消失し, 二酸化炭素へと完全酸化された. この時残存するQuの急激な転化, Cl^-及びOH^-イオンの急激な減少がみられ, 同時に水溶液中のRu(V11)に帰属される385nmの吸収も消失した. これはQAなどの生成により水溶液中のOH^-濃度が低下し, その値が限界濃度(0.20〜0.24M)を下回ると触媒種がRuO_4へと変化し, 芳香環がCO_2へと完全酸化されることを示している. またOH^-初濃度が3.3M以上になるとQAの収率は低下し, OAが主生成物となった. これは触媒種が, [RuO_4]^<2->へと変化することに起因する. 反応を低温(10°C)で行ったところ, OH^-初濃度4.5MでOA収率は著しく向上し, 168%(対Quモル比)に達した. 種々のキノリン誘導体を被酸化物をした場合, 水酸基やメトキシ基のような電子供与基の存在は酸化速度を促進し, 逆に電子吸引基は極端に速度を低下させた.
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