研究概要 |
ZnSO_4,Na2S各水溶液を用い0°Cで調整し硫化亜鉛(以下ZnS-Oと略す)は, 水溶液中のアルデヒドやケトンの有効な2電子光還元半導体触媒であることが判明した. 以下の研究成果により, ZnS-Oは格子欠陥や不純物による局在準位の少ない微結晶がゆるく凝集した構造を持ち, 313nm光を照射して生成する伝導帯の電子は局在準位(中間準位)にトラップされることなく吸着基質に連続移動しプロトン化を伴ってアルコールを与えるものと解釈した. 1.ZnS-Oやそれを100°C加熱処理したZnS-100にはバンドギャップ発光(340nm)と中間準位発光(420-450nm)が観察されるが, 2電子光還元に有効なZnS-Oのバンドギャップ発光の寿命が23nsと最も長寿命である. 2.ZnS-Oの反射法による吸収スペクトルは365nm付近から340nmへと急激な吸収の立ち上がりを示し中間準位が少ないことを示した. 3.水溶液中ZnS-Oを光触媒とする2-ブタノンの2電子光還元を検討した結果, S^<2->とSO_3^<2->共存下で2-ブタノールに定量的に還元されることが確認された. 4.ZnS-Oの450nm付近の中間準位発光がS^<2->とSO_3^<2->の共存下では観測されないことから, S^<2->の存在はS欠陥の生成を抑制し, さらにそれがS_2^<2->に酸化されると共存するSO_3^<2->によってすみやかにS^<2->に還元されるためにZnS-O微結晶表面にS欠陥やS_2^<2->等の不純物による中間準位の生成が抑制されるためと解釈できる. さらに, 瞬間マルチ測光システムによるZnS-Oの希薄溶液の吸収スペクトルは短波長側にシフトし, ZnS-Oの微結晶は〜25A2F2程度の粒径であること, 電子源としてS^<2->とSO_3^<2->を用いるZnS-Oの光触媒反応において, 還元電位が大きく卑なシクロヘキサノンや2-ブテンー1-オールも相当するアルコールに光還元されることより, ZnS-Oの微結晶部の量子サイズ効果が一部高い還元力の発現に関与するものと結論した.
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