研究概要 |
超音波を用いる合成反応は不均一系反応に有効に働くことより, 有機合成反応における新手法として最近, その研究が活発になってきた. 本研究では以下の3つの反応を超音波照射下で行なった. I.金属スズ存在下, 臭化アリルとアルデヒドとの反応;臭化アリル1分子とベンズアルデヒド2分子で付加環化した生成物, すなわち, 4-ブロモー2,6-ジフェニルテトラヒドロピランと2,6-ジフェニルー4-オキソヒドロピランをone potで生成した. 本反応の諸条件についても検討した. II.塩化トリクロロアセチルとベンジリデアニリンとの反応;反応は標題試薬と金属スズとの混合物に超音波を照射して行った. 本反応におよぼす反応モル比や反応溶媒などの諸条件ならびに基質の置換基効果について検討した. 塩化トリクロロアセチル:ベンジリデンアニリン:金属スズのモル比は20:15:30が好ましく, またテトラヒドロフラン溶媒を用いると好収率で環化生成物であるβ-ラクタムが得られた. 置換ベンジリデンアニリンとの反応では, 置換基の電子的効果の如何にかかわらず, いずれの場合も収率が低下した. III.ブロモ酢酸エチルとベンジリデンアニリンとのReformatsky型反応への拡張;本反応は超音波照射を行っても, スズ単独では生起せず, アルミニウムの助けを必要とし, 得られる生成物はα-置換アミノプロピオン酸エステルであった. ブロモ酢酸エチル:ベンジリデンアニリン:Sn:Alのモル比は3:1:2:2が好ましく, 溶媒としてはクロロホルムが良く, ついでジクロロメタンであった. なお, テトラヒドロフランは良溶媒とならず, 四塩化炭素では全く反応が生起しなかった. また, Sn/Al混合系は金属亜鉛を用いるより, 超音波照射による加速が顕著であった. 本反応の基質の置換基効果はIと同様, 置換基の電子的効果と関係なく収率が低下した.
|