研究概要 |
遷移金属を用いる工業的プロセスの開発研究は, 有機化学工業の重要な課題の一つである. 本研究では, 医薬・農薬等の合成でしばしば必要とされる環状アセタール化合物をPd触媒を用いオレフィンから直接合成する方法について検討した. その結果, 以下のような成果を得た. 1)本アセタール化反応をスチレンに適用し医薬・香料用製造原料となるフェニルアセトアルデヒドの合成を行なった. すなわち, PdCl_2-CuCl-O_2の組み合せを触媒系とし, 1,3-プロパンジオール又はメタクールによりステレンのオレフィン末端位炭素をアセタール化させ, その後脱アセタールを施しこの化合物を合成する方法を開発した. 2)反応系にNa_2HPO_4を添加した条件下でフェニルビニルケトンのオレフィン末端位を選択的にアセタール化させ, 各種ビルデイングブロックとして有用なベンゾイルアセトアルデヒドの合成を行なった. 3)入手容易なアクリル酸エステル, アクリロニトリル, スチレンと(R_1R)-2,4ペンタンジオールとの反応から不斉合成用反応剤として有用な光学活性環状アセタール化合物の選択的合成法を開発した. 4)本アセタール化反応をα-シアノアリルアセテートに適用しγ-位炭素が位置選択的にアセタール化されることを見い出した. 5)本アセタール化反応は銅塩助触媒を用いなくても進行すること, またBiCl_3-LiClの組み合せを助触媒として用いても効果的であることを明らかにした. 6)ホモキラルなアセタール環を持つβ-ケトアセタールのカルボニル基にMeLiを付加させたところ, 比較的高い不斉収率で光学活性アルコールが生成することを見い出した. 7)光学活性ジオールオレフィンの分子内アセタール化反応により, 昆虫フェロモンである光学活性フロンタリンの最短縮合成法の開発に成功した.
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