研究概要 |
反応性中間体の一つであるビニルカチオンはアセチレン類への親電子付加によって生成する外、近年ビニルハライド類の加溶媒分解や光反応によっても生成することが明かとなっち。このビニルカチオン分子内の適当な位置にO,S,N等のローンペアを持つ求核性原子がある場合には分子内求核反応が優先して起こり複素環化合物が生成する。しかし乍らこれらヘテロ元素の特性によって環化反応生成物を異にするのでその要因を解明し、複素環化合物の新しい合成法を提供することを研究の目的とした。 1.β-(O-アルキルヘテロ置換フェニル)ビニルブロミドの光反応ではヘテロ元素がO,S,ともに5員環の複素環を生成するが、Sではラジカル反応で進む。加溶媒分解はα置換基がアリール基のみに制限される。 2.β-(O-アリールヘテロ置換フェニル)ビニルブロシドの光反応ではヘテロ元素がSの場合に5員環のベンゾチオクフェン環が生成するが、Oの場合にはα置換基がアリールでは7員のオキセピン環が生成し、より安定なカチオンへの転位や、脱離によるアレンやアセチレン結合が生成し、これらはすべて炭素陽イオンを中間体とする反応で進むことを明らかにした。 3.O-ヘテロ置換メチルフェニルアセチレンへの臭素の付加反応は、β位が、アリール基の場合に、ビニルカチオンは分子内求核反応で5員環を生成し、2位に臭素を持つ生成物を与える。一方、(O-ヘテロ置換フェニル)-フェニルアセチレンでは臭素との反応でヘテロ元素がSの場合にはチオフェニウム塩が生成するが、Oの場合には単なる付加反応による二臭化物が得られヘテロ元素による反応性の相違が顕著である。 4.(O-ヘテロ置換フェニル)フェニルオレフィン類への臭素の付加では三価の炭素陽イオン中間体に、O,Sによってことなる複素環生成が見られた。種々の新しい複素環合成法を見出した。
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