研究概要 |
キラリティを有する両性界面活性剤を研究する目的で以下の一般式で表わされるアミノ酸型(I), アミノスルホン酸型(II), ベタイン型(III)の両性界面活性剤を合成してそのキラリティが表面張力低下能や抗菌性にどの様に影響するか疎水基, 親水基の相違とあわせて比較, 検討した. (III)については不斉炭素, 不斉窒素に基づくジアステレオマーを光学分割し, 細菌や真菌に対する抗菌性について検討を試みた. その結果, 静的な平衡表面張力低下能やcmcについてはキラリティーの差異が全く影響されず, 従来のTraube則に一致する結果が得られた. 一方, 振動ジェット法により界面活性剤水溶液において溶質の気液界面への吸着速度について検討したが(III)のジアステレオマー間に差異が認められTLC上のRf値の大きいものが小さいものに比べて速やかに気液界面に吸着することがわかった. 又両性電解質水溶液の表面張力値のpH依存性についてみるとキラリティには係りなく, 酸性側, 塩基性側で不安定であり, 特に酸性側ではいずれの両性化合物も相分離をおこした. 抗菌性についてはそのキラリティに注目すると(I)や(II)の様な不斉源が1ツのもの ついては光学異性体間の抗菌性の差異に有意差は認められず, 以前に著者らが報告した光学活性なカチオニクスの実験結果と一致した. (III)についてはグラム陽性菌, 真菌の一部に対してその抗菌性に立体異性の影響が認められた. すなわちエナンチオマー間には差は認められず, ジアステレオマー間についてその試料のTLCにおけるRf値の低いものが高いものに比べて秀れた抗菌性を示した.
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