研究概要 |
本研究は, 硫黄官能基であるチオ基とスルホニル基の特性を活用し, 医薬や農薬などの合成に重要なα-アミノケトン類を製造する新しいプロセスの開発を目的としている. 検討した反応は, ケテンジチオアセタールS,S-ジオキシド類へのアミン付加, 得られた付加体のアルキル化, および硫黄部分のカルボニル基への加水分解である. 1.アミン付加 ケテンジチオアセタールS,S-ジオキシドとして, メチルチオメチルp-トリルスルホンのアルキリデン誘導体を用い, アミン類の付加を検討した. その結果, 第1級アミンを約了当量用い, 無溶媒下加温すると, 付加が円滑に進行することを見い出した. 2.アルキル化 前項で得られるアミン付加体は, メチルチオ基とp-トリルスルホニル基とにはさまれたメチンプロトンを有しており, DMF中水素化ナトリウムでアニオン化できる. このアニオンはハロゲン化アルキルとの反応によってアルキル化を受けるが, アミノ基の窒素上にはアルキル化が起こらないという注目すべき結果を得た. 3.硫黄部分のカルボニル基への加水分解 第2項でアルキル化体は, α-アミノケトンのジチオアセタールS, S-ジオキシド誘導体である. この硫黄部位のカルボニル基への加水分解は, 通常の濃塩酸-メタノール(9:1)中での加熱還流という条件では進行が遅く, さらに酸濃度の高い4:1混合物を用いることが必要であることが分った. 本研究によって, 上記の3段階の反応の組み合せでα-アミノケトン類が効率よく合成できることを明らかにした.
|