研究概要 |
キノン系化合物は, 機能性色素, 生理活性, 抗細菌性等の様々な機能性が期待できる重要な化合物の一群として知られている. 本研究では, キノン核へ管能基を簡便に導入する方法として金属キレート錯体形成による配位子(キノン化合物)の活性化を利用したキノン誘導体の新規合成法の開発と, 得られたキノン誘導体の新しい機能を開拓することを目的とし, 次の成果を得た. 1.1, 5-ジアミノー, 1, 2-(および1.5-)ジヒドロキシーアントラキノンを出発原料に用い, 金属塩存在下でアルキルアミンと反応させることにより, アルキルアミノ基がアントラキノン核に直接的に導入された種々の誘導体を合成することができた. また, 1.8-ジヒドロキシアントラキノンとの同条件下の反応では, まったく異なるタイプの反応が進行することを見い出した. 2.キノリンー5.8-ジオンと種々の脂肪族および芳香族アミン類を金属塩存在下で反応させることにより, 位置選択的に6位をアミノ化およびアリール化できることを見い出し, 種々の誘導体を高収率で得ることができた. 3.1, 2-ナフトキノンと種々の芳香族アミン類を金属塩存在下で反応させた場合では, 4位でのアミノ化およびアリール化が促進され, 種々の誘導体が高収率で得られることがわかった. 4.上記の反応によって合成したキノン誘導体の中からクロモトロピックな性質を有する化合物を多く得た. 例えば, 4-アリールアミノー1, 2-ナフトキノン類の中には, 顕著なソルバトクロミズム性を示すものがあった. また, 6-置換-5, 8-キノリンジオン類や4-置換-1, 2-ナフトキノン類の中には, 金属キレート錯体形成により可視スペクトルが大幅に深色移動し, 吸収強度が著しく増大する変化(メタロクロミズム性)を示すものがあり, この特性を利用すれば, 今注目されている近赤外吸収色素を比較的簡単な分子設計で合成できると考えられる知見を得た.
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