研究概要 |
低対称性クラウンエーテルである16-クラウンー5が高いNa^+, Ag^+選択性と示すことがすでに解っているので, この16-クラウンー5系に焦点を絞り, その配位能とカチオン選択性を大きく向上させることを目標に研究を進め, 以下の成果を得た. 1)まず, Na^+に対する配位能と選択性の向上を目指し, 二次元的な配位をするクラウン環のさらに上下から配位を可能にするために各種の配位原子を持つ側鎖を導入したいわゆるラリアートエーテルおよびダブルアームドラリアートエーテルを合成し, その配位能を測定した. その結果, 側鎖に二つの酸素原子を導入したときに配位能・カチオン選択性の何れもが極大を示し, 最大のNa^+/K^+選択性(150倍)が得られた. 2)この配位能・カチオン選択性の増大に側鎖の配位が寄与していることは, 金属ピクラートをこれらのラリアートエーテルを用いて溶媒抽出したときの有機相中のピクラートの吸収極大の位置から容易に決定できることも明らかにした. 3)一方, ソフトなAg^+については, ソフトなπ配位子であるオレフィンやベンゼン環を側鎖に導入することにより, より一層の選択性の向上を目指したが, 通常のπ電子では有効に配位しないことが明らかになった. 4)上述のように, 極めてNa^+選択性の高いラリアートエーテルが得られたので, これを母体として長いアルキル鎖を導入することにより, 完全に水に不溶なものを合成し, 現在, 膜輸送やイオン選択性電極への応用を他研究室と共同で検討中であり, 今後の発展が期待される.
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