研究概要 |
1.加硫ゴムのミクロ不均一構造 促進イオウ加硫ゴム網目のクミロ不均一構造を高分解能走査型電子顕微鏡で観察した. その結果, 通常の条件で得られる加硫ゴムにはゴムの種類によらず約200A2F2のサイズの構造が存在することを明らかにした. この構造は加硫前のゴムの一次分子両のみによって決定され, 一次分子量が50万以下では存在するが, 50万以上では消失することを見出した. 2.加硫ゴムの構造と力学的性質 加硫ゴムの力学的性質がミクロ不均一構造と密接に関係していることを見出した. 即ち, 構造の存在する領域(一次分子量が50万以下)では, 弾性率および引張り強度が一次分子量とともに増加するが, 構造が存在しない一次分子量が50万以上の領域では, 弾性率および強度がほぼ一定となることが明らかとなった. 3.加硫ゴムの膨潤特性と構造 加硫ゴムの網目の結合イオウの量は一次分子量に依存しないこと, 従って化学的な橋かけ密度は一次分子量に依存しないことを見出した. 一次分子量が低い場合には, 膨潤状態の弾性率が著しく低下することから, この場合には応力に寄与しない橋かけ点が多数存在すると推定した. 4.加硫の動力学と不均一構造の生成 不均質構造の成因を明らかにするため, 加硫の動力学におよぼす一次分子量の効果をしらべた. 加硫過程を二段階逐次反応と考え, 自己触媒機構とくみ合わせることによって, 加硫反応における熱的挙動を精度よく解析できた. その結果, 電顕によって観察された構造の生成を決める主要な因子が分子鎖の運動性であることを明らかにした.
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