研究概要 |
本研究は, 不揮発性の物質を1-10wt%含む水溶液で膨潤したポリビニルアルコール膜がO_2とN_2の選択透過に顕著な効果をもつことを明らかにした. 尿素, チオ尿素, 塩化リチウム, ヨウ化リチウム他9種の物質の水溶液を含む膜で, 6〜15倍のO_2の選択透過が見出された. 研究の具体的な内容は以下の通りである. 1.金属製の含水膜の気体透過係数測定装置を製作した. この装置は含水膜の気体透過係数測定の標準的な装置となり得るもので, 温度, 高圧測圧力が可変である. 本装置により, 操作が簡便で, 精度±10%以内で透過係数が測定できた. 2.9種の不揮発性物質を含む水溶液で膨潤した膜について, 含水率が35〜80%の範囲でO_2とN_2の透過係数を測定した. 含水率の低下と共に両気体の透過係数は〜10^<-9>(STP)cmcm^<-2>S^<-1>cmHg^<-1>から低下するが, この際, 不揮発性物質の種類により, O_2とN_2の透過係数は特徴的に変化することが明らかになった. 特に上記の4物質を含有する膜では含水率40%以下でO_2/N_2の選択透過性が高い. 3.2の結果について, 以下の解析を行った. 選択透過に有効な物質は, 膜基質ポリビニルアルコールに親和性の高い物質である. 気体の拡散係数の膜含水率による変化は, 膜中のバルク水溶液相で, ポリマー近傍の乱された水溶液相の2相を考えたモデルにより, 定量的に説明できる. O_2/N_2の選択透過は主として膜中への選択的溶解によってもたらされるが, この溶解は, 不揮発性成分の添加により, 膜中に乱された水(不凍水)が過剰に生じることによると推定できる.
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