研究概要 |
多相構造を有するアイオノマーは無定形領域, ラメラ結晶, イオン基の静電相互作用によって形成される数個のイオン対からなる会合体(multiplet)あるいは更に多くのイオン対からなる会合体(クラスター)によって構成されている. 本研究では従来なおざりにされていたラメラ結晶の高次構造(ラメラ結晶の長期周・配向)ならびにmultiplet・クラスターの高次構造の小角X線錯乱(SAXS)による解析(長周期ピーク, イオン会合体ピーク, ギニエプロット)と電子スピン共鳴スペクトル(ESR)によりイオン会合体の微細構造を解明し, アイオノマーの高次構造モデルの確立を目的とする. 種々のメタクリル酸含量と種々の中和度を持つエチレンーメタクリル酸共重合体, スチレンーメタクリル酸共重合体アイオノマーのSAXS測定により, 小角領域にイオン会合体間距離に対応するクラスターピークが観察された. イオン含量とともにクラスター間距離は増大した. また小角領域におけるギニエプロットから会合体の半径を求めることができ, 同様にイオン含量とともに会合体半径も増大した. エチレン系アイオノマーは温度とともにクラスターピークは小角側にシフトし, クラスター間距離は増大するが, スチレン系アイオノマーでは逆の効果である. エチレン系, スチレン系アイオノマーともにクラスター間距離は湿度とともに増大するが, クラスターピークの強度は逆の挙動を呈している. 両アイオノマーにおけるイオン会合体に対する温度・湿度に対する効果が異なり, イオン会合体の高次構造の違いを反映していると考えられる. エチレン系アイオノマーのMn, Cu塩のESRによりMn, Cu塩近傍の微細構造を検討した. 中和度が小さい場合はMn, Cuイオンは孤立しているが, 大きくなるとイオン会合体, ダイマーを形成することが明らかになった. さらにイオン会合体の分子運動とイオン間距離を求め, 特徴的なイオン会合体の微細構造が解明された.
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