研究概要 |
セルロース(Cell)に長鎖アルキル基, オキシエチレン短鎖などを導入して種々の誘導体を合成し, そのサーモトロピック液晶形成と置換基の化学構造との関係及びその構造特性を偏光顕微鏡, DSC, X線回折法, CD法を用いて検討し, 以下の成果を得た. 1.セルロースが親水性であることを勘案すると, 疎水性のアルキル鎖より親水性の屈曲鎖を導入した方がよりサーモトロピック液晶を形成し易いと考えられるが, 事実, オキシエチレン鎖を導入した誘導体, Cell-O(CH_2CH_2-O)_2, CH_3では30〜180°Cと非常に広い温度範囲にわたってサーモトロピックコレステリック液晶を形成し, 可視波長域を60°C(紫)-10°C(赤)の温度幅で通過するらせんピッチを有することを見い出した. また, quenching方によるこれら液晶構造の固定化を試み, その構造特性を明らかにした. 2.長鎖アルキル基をエーテル結合で導入した誘導体, Cell-OCH_2)nH(DS=3)の場合も, n=7になる広い温度範囲にわたって(85〜130°C)明瞭なコレステリック液晶を形成し, n=10では太陽光で玉虫色の光彩を放つ液晶となる(50〜100°C)ことがわかった. しかし, 3.エステル誘導体, Cell-OCO(CH_2)nHについては, n=6〜10の誘導体は融点付近(約100°C)の狭い温度範囲で液晶性を示し, n=14のPalmitateの場合でも100〜125°Cの温度範囲で流動性と光学的異方性が観察されるに過ぎない. 4.ヒドロキシプロピル及びヒドロキシエチルセルロースを出発試料とする. 同様の実験から, セルロース誘導体の液晶形成挙動は導入するアルキル基の結合様式によって非常に異なるのみならず, サーモトロピック液晶形成という観点からは親水性の置換基の方が疎水性のアルキル鎖に較べてより効果的であることがわかった.
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