研究概要 |
メタクリル酸エステルあるいはα-メチルスチレンとアゾ開始剤とを組合せた形の5種類のモノマー開始剤を合成した. これらはメタクリル酸メチルあるいはスチレンとの共重合により開始剤単位含量が主として0.5〜5mol%のポリマー開始剤を得た. こうして得たポリマー開始によるスチレンあるいはメタクリル酸メチルの重合でグラフト共重合体50〜70wt%を含むポリマー混合物が生成する. ポリマー開始剤の分解速度はモノマー開始剤と変らないと思われるが, 捕捉剤法で求めた開始剤効率は0.2〜0.5と低分子開始剤よりも低い値となった. 開始剤単位含量と分子量から求めた幹ポリマーあたりの開始剤単位数を使えば, クラフト共重合体の分岐数が算出でき計算値と実験値はほぼ一致することを見出した. したがって, グラフト共重合体の分岐の長さならびに分岐の数がラジカル重合の連度論にもとづいて制御できることを示している. ポリマー開始剤の分解ではマクロラジカルと低分子ラジカルが生じ後者は分岐とならない単独重合体への重合を開始するため, ポリマー混合物中のグラフト共重合含量は上記の範囲となる. グラフト共重合体含量はモノマー開始剤単位の構造により変化したが, どのような因子が重要であるかの特定はできなかった. これらの結果ならびに合成の収率を考慮に入れればモノマー開始剤としてすぐれているのは, 1, 1^1-アゾビスー1-メタクリロイルオキシフェニルエタン, 4, 4^1-アゾビスー4-シアノ吉草酸2-メタクリロイルオキシエチルおよび4, 4^1-アゾビスー4-シアノ吉草酸p-イソプロペニルである. 特に最後のα-メチルスチレン型モノマー開始剤は, ポリマー開始剤となっても架橋が起りにくい点で, 他よりもさらにすぐれていると思われる. これらを使用すれば, スチレンおよびメタクリル酸メチル以外のモノマーからのポリマー鎖を組合せたグラフト共重合体合成も可能である.
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