研究概要 |
アルカリ金属カチオンに対して, すぐれた捕捉能や選択性を有する高分子材料を得ることを目的として標記ポリマーを合成し, そのカチオン捕捉能を検討するとともに, イオンクロマトグラフィー用充填剤への応用を検討した. 1.クラウンエーテル部とケイ皮酸エステル部を同一分子中に有するアクリル型モノマーを合成し, ラジカル重合により光二量化型ポリクラウンエーテルを合成した. これらポリマーを適当なテンプレートカチオン共存下で紫外光照射し, ケイ皮酸エステル部を二量化することにより隣接クラウンエーテルの相対配置を固定すると, アルカリカチオン, 特にサイズの大きいカチオンに対する捕捉能は著しく増大することを見い出した. 2.同一ポリマー鎖中に環サイズの異なる2種類のクラウンエーテルを有する光二量化型ポリマーを合成し, そのアルカリカチオン捕捉能を検討した. 環サイズの異なるクラウンエーテルを含むポリマーのカチオン捕捉における選択性は, 単一の環サイズのクラウンエーテルを有するポリマーを, 2種類ブレンドしたものとは異なるものが存在することを明らかにした. 3.非環状オキシエチレン(グライム)鎖を有する光二量化型ポリマーを合成し, そのカチオン捕捉能を検討した. 本ポリマーのアルカリ金属カチオン捕捉能および選択性は, オキシエチレン鎖長に大きく依存した. クラウンエーテル部を有する同タイプのポリマーと比較すると, そのカチオン捕捉能は劣るものの, テンプレートカチオン共存下で光二量化反応を行うことにより, そのカチオン捕捉能を増大させることができた. 4.18-クラウンー6部を有する光二量化型ポリマーを充填剤とする, イオンクロマトグラフィーでは, アルカリ金属カチオンのみならずハロゲンイオンや硫酸イオン, 硝酸イオンあるいはチオシアン酸イオンなどのアニオンをも分離することができた.
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