研究概要 |
1.触媒担持薄膜の作製 細孔径約1ミクロンのα-アルミナ多孔質管(肉厚1mm,管外径10mm,長さ13cm)の外表面近傍に、ゾル-ゲル法によってアルミナゲル膜(約10ミクロン)を担持させ、これをケイ酸ソーダ水溶液で処理(約95℃)することによって約十数【A!°】以下の超微細孔を持つ多孔性セラミック薄膜管を作製した。この膜の細孔内表面は固体酸の特性を示し、アルコールの脱水反応にも活性を示す事が確認された。この膜に含浸法によって硝酸ニッケルを担持させ、乾燥、空気雰囲気下で加熱分解後、約300℃の水素気流中で還元してニッケル担持触媒膜を作製した。 2.測定法 従来の粒状触媒を用いる反応操作とは異なり、上述の薄膜触媒管の内側に原料ガスのエチレンを加圧状態(約2気圧)で流入させ、管外に水素ガス(1.4〜2気圧)を流した。管内より触媒膜を通して流出するエチレンと管外から触媒膜中に拡散してくる水素とを反応させ、生成するエタンを触媒管外の水素気流中に取り出す方法によって250〜350℃にて反応実験を行なった。 3.結果及び今後の研究の展開 水素供給量が当量付近以上において未反応エチレンの透過は極めて少なく、0.02%以下であった。その反応速度は40〜160mol/h【M^2】-膜面積で、膜面上にコークの生成が見られたが2週間後にも劣化は認められなかった。これらの事より、反応生成物中に分離の困難な未反応原料成分が混入しない反応器として、多孔性触媒膜反応器の応用の可能性が高い事が明らかとなった。本研究では不可逆反応を例として取り上げたが、この種の触媒膜反応器においては空間時間を極めて小さくする事ができるため逐次反応の選択性の向上、可逆反応の見掛けの反応率の増大化等が期待でき、今後、触媒活性の向上を計るとともにこれらの点について検討する。
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