研究概要 |
マルトデキストリン水溶液中に, エタノール, l-メントール, d-リモネンを微量香気成分として溶解させた試料を用いて, その単一液滴を種々の条件下で乾燥させ, これら香気成分の残留率に与える乾燥条件の影響, β-サイクロデキストリン添加の効果について検討し, 以下の結果を得た. 1.エタノールの残留率は, マルトデキストリン初期濃度, 熱風温度, 湿度および速度の影響を受けるが, とりわけ前3者の影響が顕著である. すなわち, 残留率はマルトデキストリン初期濃度が30%以上になると急激に増加する. また熱風温度が高く, 湿度が低いほど残留率が増加することが認められた. 2.1の結果は, 試料を固体, 水および香気成分から成る成分系と考え, 多成分系拡散方程式を数値解析して得られた結果と良く一致した. 3.乾燥中に液滴が膨張, 破裂を繰返す条件下では, それらの頻度, 強度により残留率は著しく異る. 4.l-メントール, d-リモネンは, それぞれ難水溶性および非水溶性であるが, これらを香気成分としたマルトデキストリン水溶液中に, β-サイクロデキストリンを添加した試料を用いて, 1.および3.と同様な実験をおこなった. その結果, 乾燥中に液滴が膨張, 破裂等を起こさない場合には, 香気成分残留率は, 熱風温度に無関係にほぼ100%となり, 無添加の場合の残留率50%に比して顕著な増加が認められた. また3.の条件下で実験をおこなった結果, 残留率は70〜80%まで減少したが, 無添加の場合の残留率40%に比較すると, この場合にも著しい効果が認められた. 今後の課題としては, 他のα-型, γ型サイクロデキストリン添加の効果について検討する必要がある.
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