研究概要 |
本研究は, 固体電解質内を透過する酸素イオンの特長を生かすことのできる反応器を開発すること, および, その際に触媒電極として用いるペロブスカイト型酸化物の酸化反応活性を把握することが, 主な研究目的であった. 二年にわたる研究の結果, 以下の知見が得られた. 1.固体電解質内を透過する酸素イオンは, 気相より吸着する酸素に比して, 銀電極上で高活性であった. 同時に, 部分酸化反応に関しても活性が高く, メタンの酸化カップリング反応においては, エタン等のC2成分の吸収が気相混合系に比べて一桁程度大きな値となった. この反応に用いられる透過酸素の割合は, 銀触媒電極で0.5%程度であった. 2.C2生成に用いられる酸素の割合は, 電極材料に強く依存し, LaO_3電極ではほとんどゼロであった. この電極では, ほとんど全ての透過酸素が完全酸化反応に用いられた. 3.以上のことから, O2-と考えられている透過酸素が直接C2生成反応に用いられるのではなく, 別の活性種(イオン種)になって反応しているものと思われる. 4.Aサイト金属としてCa, Sr, Baのアルカリ金属を用い, Bサイト金属としてTi, Zr, Ceの遷移金属(IV)を用いて調製したペロブスカイト型酸化物の多くは, メタンの酸化カップリング反応の活性が高かった. Bサイト金属によって酸化反応活性が決まるという従来の知見とは異なり, Aサイト金属が重要な役割を果たしていることが判った. 5.Aサイト金属の単独酸化物の場合に炭酸塩となって不安定であったアルカリ土類金属が, 複合酸化物とすることによって安定化された. 6.単位表面積当りのメタン酸化反応活性は, 金属イオンと酸素イオンの結合距離の変位, 即ち, 結合距離と両イオン半径の和との差, の間に良好な相関関係のあることが明らかにされた.
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