研究概要 |
1) アブラナ属栽培種間あるいは野生種からの遺伝子導入の際の橋渡し植物としての合成三基六倍体の利用生を探るため, 三基六倍体2系統と栽培種6種16系統(同質四倍体も含む)および近縁野生種(Brassica gravinne, Diplotaxos muralis)を材料に用い, 正逆交雑を行ない交雑和合性を調査した. その結果, (1)両親の倍数性の差が小さいほど和合性が高い, (2)三基六倍体を母体に用いた時和合性が高い, (3)Aゲノムを含む種との和合性が高い, (4)自殖稔性の高い固体ほど交雑和合性も高い, (5)近縁野生種属との和合性も認められることが明らかとなった. 以上のことから, 和合性の程度に差はあるものの, 三基六倍体は, いずれの植物とも雑種を形成し橋渡し植物として広く利用できることが示唆された. 2)アブラナ属作物の遠縁交雑における子房培養法の有効性を検討するためarvensisと栽培種B-campestris(Brassicinae亜連に属する)との属間雑種の作製を試みた. 通常の交雑では正逆281花交配を行なったが, 雑種は得られなかった. 一方, 子房培養(MS倍地あるいは500mg/lのカゼイン加水分解物を含むMS倍地)によりM.arvensis×金町小カブ, 菜心×M.arvensisの組合せで, それぞれ1交配花当たり0.28および0.05の雑種胚が得られた. これらの胚は胚培養(MS倍地)により植物体再生を試みたが, 奇形となり植物体形成に至らなかった. そこで胚軸培養(MS倍地あるいは1.0mg/lの6-ベンジルアデニンを含むMS倍地)を行ない, 胚軸からの不定芽・胚様体形成により雑種植物を得ることができた. 以上の結果から, アブラナ属遠縁交雑における子房培養の有効性が明らかとなり, またM.arvensisの有用形質(光合成特性)の栽培種への導入が可能となるものと思われる.
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