研究概要 |
西南暖地における暖地型イネ科牧草の越冬性の向上に資する基礎的資料を得る目的で研究を行なった. 成果の概要は以下のとおりである. 1.8草種における越冬前後の個体群光合成能力の変化を比較すると, おそくとも11月下旬の初霜の頃以後は, 各草種とも, 能力が急激に低下し, 1月上旬から2月下旬にかけての能力は0またはそれに近い. その後は, 春の再生に伴ない, 越冬する草種では能力が増大する. この間の能力の経時的変化は, 草種により異なるが, 能力の低下速度或いは維持程度の草種間差と再生時における能力の増大速度の草種間差との間には, 特定の関連性はない. 2.ダリスグラスなどの3草種を対象として, 剪葉処理により, 11月下旬から2月下旬までの個体の光合成を抑制すると, ダリスグラス及びバヒアグラスでは, この抑制が強いほど春の再生時における光合成能力の増大が劣るという関係がある. しかしローズグラスではこの関係はない. また, ダリスグラス及びマカリカリグラスを対象として, 10月及び11月に, 各々1ヶ月間にわたり, 遮光処理によって個体の光合性を抑制した場合も, ダリスグラスでは前記の例と同様な関係があり, マカリカリグラスは前記のローズグラスと同様である. ダリスグラス及びバヒアグラスでは, 他の2草種に比べて, 降霜或いは低温によって枯死する分げつが少ないので, 春の再生当初における株の生長に対して, 貯蔵養分量が制限要因となり易い. 他方, 貯蔵養分は, 主として光合成により生産される. このようなことから, ダリスグラスなどでは, 低温期の光合成速度と春の再生時の光合成能力との間の関連性が強いと推察される. 以上のように, 低温期の光合成速度と越冬性との関連性は草種により異なるが, 越冬性のよい草種では, 春の再生時の生長に対する低温期の光合成の意義は大きい.
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