研究概要 |
休眠性程度の異なる3品種を用いて, 室温に貯蔵された種子を収穫期から10日毎に酸素100%, 20%および0%の気中に置床して発芽率を測定し, 休眠解除に及ぼす酸素の影響をみた. 休眠解除に対して高酸素濃度は促進的に, 低酸素濃度は抑制的に作用することが明らかとなった. そしてこれらの効果は休眠性の強い品種ほど大であった. つぎに, 休眠打破処理を施した種子について, 置床中の酸素分圧を変えて発芽率を測定した結果, 休眠打破の効果は高酸素分圧条件下で大きく促進され, 低酸素分圧で抑制されることが明らかとなった. 脱頴および刺傷によって休眠を打破する場合のABAの不活性化に及ぼす水分の影響をみた. ABAの活性の低下の程度は, 乾燥種子よりも吸水種子で著しく大であり, 酸素の透過が促進された条件下において水分の存在がABAの不活性化の速度を促進することが明らかとなった. つまり, 人為的な休眠打破処理によって酸素の種子内への透過は促進されるが, この酸素の透過の促進と吸水によってABAの不活性化が助長されるのは共通的な現象であった. 酸素濃度の異なる条件下で, 吸水種子を高温処理した場合, ABAの活性は高酸素濃度で低下し, 無酸素条件下ではほとんど不変であることが生物検定によって明らかになり, この無酸素条件下でのABA量の不変は, ガスクロマトグラフィー分析によっても確認された.
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