研究概要 |
直播水稲の生育並びに収量の安定かつ省力, 低コスト栽培法の開発を目途に, 従来の直播断根栽培法を基本とする施肥技術と応用的な施肥法を考究した. 施肥は土中施肥を基準とし, その施肥時期との関連を追究したところ分げつ初期の断根施肥に対し, 幼穂形成期の切根土中施肥は登熟を高め生産に安定的であり生育調節をかねた省力施肥技術と考えられた. そこで切根を伴った側条施肥に主点をおき作条深層施肥及び点施の方法の作用特性を考究した. 即ち, 乾田直播形式で播種したホウネンワセの幼穂形成期(葉令指数78〜80)に作条を想定した株際5cmの距離の両側から垂直に断根施肥板を挿入し, 5cm及び15cmの深さに粒状肥料を施肥した. また同様の位置に点施して表層施肥区に対比し, 生育生産さらには形態, 生理学的変化への影響を追究した. その結果, 作条深層施肥は点施に対し, 地上部生育を調節し無効分げつの発生を抑え最終的には有効茎歩合を高め, さらには登熟の程度をも高めて収量を確保することが判明した. これに対し幼穂形成期の点施は, むしろ無効茎を多発し最終的には有効茎歩合は低下し, ひいては稔実をも低下させる結果を招いた. 特に施肥に伴う生理的変化として作条深層施肥は, 切根によって新根の発生が旺盛で後期の根の活性が極めて高いこと, また, 後期まで水稲体からのエチレン生成量が多く, 木部圧ポテンシャル値は高められ, 蒸散抵抗値の大きいことから乾性的生理状態であることが知られた. また登熟期の下位節間は短縮と稈壁の肥厚がみられ, 上位葉の直立形及び気孔細肥の小形化と数の増大など乾性的な生理変化に伴う特異的な形態の変化と見ることが出来る. しかし, 土中施肥の深度の相違からは生育生産及び生理的変化への影響は認め得ず, 施肥方法の相違に基づく差異の大きいことが明らかとなった.
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