研究概要 |
キュウリの単為結果における植物生長調節物質の役割を解明するために, 品種'もがみ'および'長日落合二号'を材料として, 開花当日受粉し, または受粉せず, ベンジルアデニン(BA), ナフタリン酢酸(NAA)を与え, 果実生長を生理学的, 組織学的, 化学的に検討した. 果長, 生重量の平均値を調べると, 'もがみ'無受粉果はほとんど生長しないが, BA, NAAによって生長を促進され, 受粉果ではBA, NAAによる生長促進は見られなかった. '長日落合二号'では無受粉でも受粉による生長に近い生長がもたらされたが, BA, NAAによる成長促進は認められなかった. しかし, 個々の果実着目するために果長についての度数分布を求めたところ, '長日落合二号'では2つのピークが認められ, 受粉した果実はほとんどが10cm以上のピークに入り, 受粉しない場合は半数が10cm以上のピークに, 半数が開花日の子房の長さと同じ4-6cmのピークに属した. BA, NAAは受粉果には影響しなかったが, 無受粉では4〜6cmのピークを6-10cm城にシフトさせ, 10cm以上のピークには影響しなかった. これらの事実は, 単為結果はall-or-noneタイプの引金反応であること, BA, NAAは結果を引起こす引金にはならず, 引金のかからなかった果実の生長を別の機構で促すことを示唆するものである. 果実のパラフィン切片によって細胞数と細胞サイズを調べたところ, 粉粉による果実生長もBA処理による果実生長も主に細胞分裂による生長であることがわかった. 開花日の子房から抽出し, ELISA法で検出したIAA量は, '長日落合二号'で'もがみ'の約60倍であり, '長日落合二号'の開花3日後の無粉粉果では単為結果した果実で単為結果しなかったものの3桁高いIAAが検出され, 単為結果が内生オーキシンによって制御されているものであることが示唆された.
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