研究概要 |
本研究は, 大規模地形改変による土地造成を伴う丘陵地の住民地開発における緑地保全の方策を提示する基礎として, 東京, 大阪, 仙台の丘陵地を対象に, 残存樹林, 緑化樹木群の生長と地形改変の立地要因を調査し, 生長の阻害となる要因は何かということについて, 多変量解析手法などを用いて検討することを目的としたものである. 1.昨年度は, 東京多摩丘陵(多摩ニュータウン), 大阪泉北丘陵(泉北ニュータウン, 仙台七北団丘陵(泉パークタウン)を対象に現地調査を行った. コナラの樹木活力度を指標に用いて, 自然潜在力の地域差と開発に伴う自然潜在力変化の様相を分析した結果, 造成により潜在力が大きく低下し, またその程度は立地(気候・土壌条件など)によって異なることが明らかとなった. 2.今年度は, 昨年度の調査を補足するとともに, 多摩丘陵の住宅開発地を事例とし, 丘陵や土地自然特性と開発インパクトをコナラの活力度を通じて総合評価した. その結果, 自然地, 小造成地(切盛2m以下), 大造成地(同3m以上)で活力度を説明する要因が異なり, 造成が大きくなるにつれて, 土地自然要因(原地形, 表層地質, 土壌など)の比重が低下し, 逆に人為的要因(樹木密度, 樹高, 周囲の不透水面の状態など)の比重が大きくなることが明らかとなった. 3.以上の結果に基づき, 大規模地形改変地における緑地保全のあり方を検討した. 造成に際しては, 切土地と盛土地の自然潜在力の相違を十分把握して適正な造成法の開発を行うこと, 自然潜在力を低下させないための造成技法を開発すること, 保全地の樹木活力度が造成地における自然潜在力回復の目標値となりうること, などが示された.
|