研究概要 |
細胞融合や組換えDNAなどの新しいバイオテクニックを駆使してカンキツ類の品種改良を行う場合、単細胞またはひとつのプロトプラスト由来のカルスから植物体を再生しなければならない。本研究ではカンキツ類の多数の品種につき種々の器官、組織から誘導したカルスの形態形成能を調査し、組織培養による品種改良のための基礎的知見を得ようとした。 1.カルスはやく、胚珠,珠心,胚軸,子葉,砂じょう,アルベド,生長点などから誘導することができたが、カルスの形状や分化能に差異がみられた。また、オレンジ類の血を引く品種の珠心カルスは分化能が高かった。 2.形態形成能が高いカルスは外観的特徴によって選抜でき、白色小粒状で生長が早いことが重要な指標となった。 3.バレンシアオレンジ,ワシントンネーブルオレンジ,マーコットタンゴールおよびマイヤーレモンの珠心由来のカルスと、シキキツのやく培養によって得られた幼植物体の胚軸部分から発生したカルスが高い形態形成能を有し、プロトプラスト単離も可能であった。これらのカルスは10ppmベンジルアデニンを含む培地で継代培養するとカルスの状態を維持し、ホルモンを含まない培地に移植すると胚を発生した。発達した胚をジベレリン1ppmを含む培地で育てると発根し、完全な植物体になった。形態形成能はプロトプラストを経由しても維持されたので、植物体-カルス-プロトプラスト-カルス-植物体という系がカンキツ類で完成された。 4.林温州,ハッサク,ユーレカレモン,マーシュシードレスグレープフルーツの胚軸から誘導したカルスは白色大粒で柔らかな外観的特性を有していたが、形態形成能はなかった。胚軸由来のカルスから単離したプロトプラストは、珠心由来のカルスからのプロトプラストに比べ細胞膜が破れにくく、操作が容易であった。
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