研究概要 |
青果物の栄養的見地並びに, 青果物自体の生理的役割に関係してカルシウムの形態的変化を調べた. 青果物の種類によりカルシウムの存在形態に相違があり, 水溶性カルシウムの多いもの(パセリ, カイワレダイコン, ウメ, キュウリなど), シュウ酸結合態の多いもの(ホウレンソウなど), ペクチンあるいはタンパク質結合態の多いもの(イチゴ, トマト, サヤインゲン)が認められた. これらカルシウムの形態は青果物の生育並びに収穫後の貯蔵条件によって変動することが明らかとなった. 例えば, トマト果実では, 未熟果ではペクチンやタンパク質結合態が多いが, 催色期以後水溶性カルシウムの割合が増加し, また生理的活性の大きいカルシウムイオンも成熟の進行と共に増加した. 果実の成熟生理におけるカルシウムの役割を知るため, トマト果実の果梗より^<45>Caを吸収させ, その動向を調べた. その結果, 未熟果実ではシュウ酸やリン酸と結合し, 成熟と共に水可溶性の形態に代謝されること, また, 細胞内では一部クロロプラストやミトコンドリアに結合していることが判明した. ミトコンドリアとの結合は, ほとんどが膜リン脂質のリン酸基との結合であり, 膜の構造維持や透過機能の調節に作用しているものと思われる. CaCl_2溶液をトマト果実に処理したところ, 果実の裂果や追熟が抑制されると共にエチレン生成も低下した. 細胞壁分解にあずかる酵素のポリガラクチュロナーゼ及びペクチンエステラーゼの活性は処理により阻害されたが, このことが, カルシウム処理による果実の軟化抑制の原因と思われる. カキ及びペピーノ果実を用いて低温障害との関係を調べた. これらは障害発生に伴い, 果肉が軟化したが, これは水溶性カルシウムの増加によるものと推測された.
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